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経営戦略

先行きの不透明な時代におけるMVVの重要性(後編)

新型コロナウイルスがもたらしたビジネスへの影響は、企業の規模や業界を問わず、先行きの予測が極めて困難な時代となっています。これまでの延長線上にない未来に向かって進んでいく上で、慣例や過去の成功事例を頼りにするだけでは、会社のかじ取りは難しくなってきていると感じている経営者の方が増えてきているのではないでしょうか。
前回の記事では、先行きの不透明な時代において組織やそこに所属する個人の道しるべとなるミッション、ビジョン、バリュー(MVV)について詳しくご紹介しました。
MVVの策定は経営や組織のメンバーにおける判断の一貫性を強化するだけでなく、社員のモチベーション強化や採用、商品企画においても重要な役割を果たすと言えます。本記事では、MVVを明確化することによるメリットについて「起業大全」(田所雅之 著)を基にご紹介致します。

MVVの策定における3つのメリット

①判断基準が明確になり組織全体における意思決定がスムーズになる
組織としての大きな方針決定から現場における個人の判断まで、重要な意思決定においてMVVは大きな影響を持ちます。例えば、世界的ガラスメーカーであるAGC(旭硝子)において、MVVのバリューにあたる「スピリット」として掲げられているのが「易きになじまず難きにつく」です。これは、苦労の末に板ガラスの国産化を果たした創業者 岩崎俊彌が残した言葉であり、今でも社員の間で意思決定の拠り所となっている言葉です。MVVが社員に浸透することで、意思決定の質が有る程度均一化され、またそのスピードが高まっている好事例ではないでしょうか。

②自社のスタンスに共感する応募者が選別でき人材採用の質が高まる
自社に適したスキルとマインドを持った人材を採用する上では、スキルと比較してマインドの適正を見極める方が困難であることは言うまでもありません。このような場面でも、MVVが明確となることで、応募者に対して自社がどのようなマインドの人材を求めているか明確に訴求することが可能になり、また見極める側としても判断基準が明確になることで採用の質が上がることが考えられます。

③組織に一体感が生まれ、意思統一のレベルが上がる
組織が拡大していくと、必ず生じるのが経営者(層)と現場メンバーでのコミュニケーションの不足です。特に拡大期の企業では、経営者と直接コミュニケーションできる社員が限られてくることで、経営者の思想が届きにくくなります。そのような状況では、MVVが有ることによって経営者の意思が現場メンバーにも伝わり、それに共感するメンバーのパフォーマンスやエンゲージメント向上に寄与することが考えられます。

まとめ

先行きの不透明な時代においては、企業の持つ価値観や哲学、信条といった経営の根本となるスタンスの重要性が改めて見つめ直されています。とりわけ、意思決定の困難さが増す状況の中で、組織全体の意思決定を円滑化し、採用の質を高め、組織に一体感を生み出すMVVは、極めて有効だと言えるでしょう。

 

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矢野口聡
この記事を書いた人
矢野口 聡

長野県出身。東京大学大学院にて工学修士取得後、国内大手メーカーに技術職として入社。 ディスプレイ材料の研究開発に従事し、新製品の立ち上げから製品化に至る一連の製品ライフサイクルに携わる。 地域のモノづくり企業における持続的な発展や、経営課題の解決に取り組みたいという思いから、グローカルへ参画。社内の新規事業立ち上げを中心に、事業戦略から人事組織事業、WEB集客・販促事業におけるコンサルタントを兼務。