columnコラム

TOP > コラム > 中小企業のスモールステップDX

業務改善

中小企業のスモールステップDX

業界や事業規模に関わらずDX(デジタル・トランスフォーメーション)が叫ばれる昨今、地方の中小企業においてもDXの必要性は無視できないものとなりつつあります。大手企業では、DXの推進により設備やシステムだけでなく、人材への大規模な投資を加速しており、その取り組みの有無は企業力の格差を押し広げるばかりです。本記事では、過去5回に渡って取り上げた「中小企業のスモールステップDX」シリーズを集約し、中小企業がDXを成功させるためには何が必要なのか、大手企業とは異なる中小企業ならではDXの進め方についてご紹介致します。

そもそもDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?

DXというと、ビッグデータの解析や業務現場のIoT化など、高額な投資や高度な専門知識が必要とされるイメージが強く、中小企業とは縁のないものだという印象を持たれがちです。一方で、DXとは何なのか説明することが出来るという方は少ないのではないでしょうか。
経済産業省が2018年に取りまとめたガイドラインでは、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
言い換えれば、顧客へのサービス提供や顧客情報の管理といった『社外との情報の行き来』、また業務プロセスやワークフローといった『社内での情報の行き来』をデジタル化することで、企業としての力を強化していくことを指します。

今、多くの企業でDXが求められる理由

このように非常に広い意味を持ったDXという言葉ですが、大手企業だけでなく中小企業においてもその対応が求められている理由は何なのでしょうか。
パーソル総合研究所が2030年における日本の労働市場の状況を推計した「労働市場の未来推計 2030」では、サービスや小売り、製造といった多くの産業において人手不足が生じることを予測しています。この報告では、人手不足に伴う実質賃金の上昇により、人件費が時給あたり250円上昇することを示しており、これは年間ベースで一人60万円程度上昇することを意味します。つまり、中小企業と言えど、例えば30名の雇用が有れば年間でかかる人件費は1800万円上昇することになります。
仮に採用が上手くいき人材不足の課題を解決できたとしても、その先に待っているのは人件費の増大による経営の圧迫という結果に陥ってしまいます。
こうした理由から、業界や事業規模に関わらずDXによる生産性の向上や業態の変革が求められているというわけです。

小さく始める中小企業のDX

それでは、中小企業がこのような社会の変化に対応し、DXを実現していくためには何に気を付ければよいのでしょうか。DXに当たり、注意すべきポイントを3つご紹介致します。

①業務を可視化し、DXする必要がある工程の洗い出す
やみくもにITツールを導入するだけでは、DXがもつ本来の効果を引き出せず、現場が混乱するだけという結果に陥りがちです。まずは社内、社外における取り組みや業務を洗い出し、人的リソースをどこに配分していくのか、何をDXしていくのかを明確化することが最初に取り組むべき最も重要なポイントになります。

②DX後の組織体制を明確化し、それを実現するために必要な過不足のないツールを選定する
DXする工程が洗い出されたら、次に行うべきはDX後の組織体制の明確化です。ゴールの状態を詳細にイメージすることで、ツールありきではなく、どんなツールが必要なのかが明確になります。ツールの選定では、どうしても高機能で高価なツールに目が行きがちですが、重要なのは目的が達成でき、かつ無理なく運用ができることです。まずはシンプルで運用ハードルが低い無料ツールを導入し、運用の練習や必要機能の洗い出しを行うのも有効かもしれません。

③運用担当者が自力で運用できるフォロー体制
DXにおいて肝心なのはツール導入後の運用です。とりわけ有料ツールについては、ツールを導入して終わりではなく定着までのフォローサービスがあるのかを確認しましょう。

中小企業のDXを成功に導くカギは、上記の3つのポイントに着目しつつ、まずは小さく取り組みを始めてみることです。例えばメールや書類で行われている社内のコミュニケーションを円滑化するため、LINEのような無料チャットサービスを導入することも立派なDXです。まだまだ実感の湧かないDXという大きな壁に対し、身近な領域、簡単な領域から優先順位をつけてデジタル化を進めていくことで、そのイメージを掴んでいくことが、中小企業のDXにおいて一番の近道かもしれません。

お試しDX!ビジネスチャットの導入でDXのイメージをつかもう

ツール導入の具体的なイメージをつかむために、お金をかけず、かつその効果を測ることが出来るのがビジネスチャットの導入です。ビジネスチャットとは、ビジネス利用に特化したLINEやメッセンジャーのようなチャットツールのことを指します。ビジネスチャットは無料で利用できるものが多く、また使い方も簡単なことから、導入ハードルが低く、DXの推進に先駆けて社内への定着を図ることで、社員のデジタルリテラシーの向上や、DX推進に当たっての課題に抽出に最適です。
それでは、ビジネスチャットを導入すること自体により得られるメリットは何でしょうか。ビジネスチャット導入による最大のメリットは、情報共有の効率化による生産性の向上です。ビジネスチャットでは、部門やプロジェクト毎にチャットルーム(LINEのグループのようなもの)を作成でき、情報共有における抜け漏れが抑制されます。また、関連性の高い情報がチャットルーム毎に集約されていることで、過去のやり取りの所在やこれまでの経緯などがわかりやすく、コミュニケーションにおける誤解の発生や忘れが起こりにくくなるだけでなく、過剰な説明が不要になるというメリットが有ります。また、メールのような冒頭の不要な挨拶が簡略化できることも大きなメリットです。

初めての導入に最適なオススメビジネスチャット2選

①chatwork
無料プランでも14グループまでチャットの作成が可能。個別チャットの作成は無制限。また1:1でのビデオ通話が可能。
有料プランは1ユーザー1月当たり400円~800円の3プランが選択でき、最もリーズナブルな400円プランでグループチャットの作成が無制限と導入のハードルが低い。
まずは無料プランから利用をはじめ、必要に応じて有料プランへの移行をおこなえるため、お試し利用に最適なサービス。また、社外とのやり取りにも活用できる点やビデオ通話機能により商談への活用も可能である。

②LINE works
無料で100人までが使用できることや、多くの方が使い慣れているLINEと同じインターフェースであることから、導入や定着のハードルが極めて低いのが特徴。
LINE同様音声通話やビデオ通話が可能なだけでなく、アドレス帳機能や一般的なLINEのユーザーとのチャットも可能。有料プランは1ユーザー1月当たり300円~1000円の3プランが有り、ユーザー数の拡張やメールやデータストレージなどの追加機能が使用できます。

上記の二つのサービスは、国内で利用される主要なビジネスチャットツールの中でも中小企業が初めて導入する際に最適です。いきなり全社的に導入するのは難しいという場合には、是非プロジェクトメンバーや一部の部署で試験的に導入し、その運用のイメージをつかんでみるのはいかがでしょうか。DXと聞くと、中小企業には無縁なものと思われがちですが、これからの人手不足社会を切り抜けていくには避けては通れない道です。まずはハードルの低いビジネスチャットを導入することで、本格的なDXに向けた小さな一歩を踏み出してはいかがでしょうか。

 

株式会社グローカルでは、地方の中小企業や、地方への参入を検討している中小企業の業務改善支援を行っています。詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

矢野口聡
この記事を書いた人
矢野口 聡

長野県出身。東京大学大学院にて工学修士取得後、国内大手メーカーに技術職として入社。 ディスプレイ材料の研究開発に従事し、新製品の立ち上げから製品化に至る一連の製品ライフサイクルに携わる。 地域のモノづくり企業における持続的な発展や、経営課題の解決に取り組みたいという思いから、グローカルへ参画。社内の新規事業立ち上げを中心に、事業戦略から人事組織事業、WEB集客・販促事業におけるコンサルタントを兼務。