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経営戦略

【中小企業のアフターコロナ#8】医療業界におけるアフターコロナの見通し

中小企業はwithコロナ・アフターコロナの時代をどう乗り切るべきかー。地方の中小企業の経営コンサルティングを行う株式会社グローカルが、業界ごとにアフターコロナの見通しをまとめました。

このページでは、医療業界におけるアフターコロナ対策をご紹介します。

コロナウイルスの経営への影響が実は大きかった医療業界

2019年1月より感染拡大を続けてきた新型コロナウイルス。医療崩壊の危機についての報道が多くなされ、患者過多によるサービス提供体制の崩壊が懸念されています。社会にとっては医療崩壊の阻止が重要ですが、理事長や院長、事務長にとっては、コロナ禍における「病院経営」という観点も外せないと思います。

5月18日に日本病院会などが発表したデータによると、4月は会員病院全体で外来患者数・初診患者数が大幅に減少しており、それに伴い、医業利益率も低下しています。不要不急の受診控えが要因であると考えられ、緊急事態宣言の対象が全国に広がった5月はさらに低下していることが予測されます。このことから、報道で取り上げられやすい飲食業や宿泊業、小売業だけでなく、医療業界も例に漏れず、コロナウイルスによる経営への影響が大きかった業界と言えるでしょう。

なお、このデータは、あくまで日本病院会等3法人の会員病院データを参考にしています。病院のデータではありますが、傾向値の把握としては、クリニック・診療所としても参考になる材料の一つです。

医療法人も条件を満たせば使える2つの助成金

ではコロナにおけるクリニック・診療所の経営問題に関して、どのような政府の支援策が使えるのでしょうか? 既に申請済みの経営者も多くいらっしゃると思いますが、現時点で申請を行える可能性の高い2種類の助成金をご紹介します。

・持続化給付金
前年の収入が半減した事業者が給付金を受け取れる制度で、個人開業のような個人事業主では100万円、法人等であれば200万円が給付されます。

・雇用調整助成金
収入の減少などによって、被雇用者(看護師など)を休業させる必要があったとき、その休業手当(の一部)を助成します。

これらの助成金は必ず給付されるとは限りません。上記2例でお伝えすると、例えば
・収入は60%まで減少した(=半減までは低下していない)
・患者がいつくるかわからないため、看護師や医療事務等の被雇用者は休ませなかった
という場合には、給付金を受け取ることはできません。

この他にも細かい規定があるため、実際に申請される際は、省庁のHPなどをご参照ください。
また給付金だけでなく、無利子の融資等も実施されています。合わせて省庁のHPなどをご確認ください。

アフターコロナを生き抜くために取り組みたい2つの打ち手

今後訪れるwithコロナ、アフターコロナとも言われる時代の中で、安定的な集患を行っていくために、地域のクリニック・診療所ではどのような戦略が求められるのでしょうか?当社が集患のご支援を行うクライアントの中でも、下記2点に取り組むクリニック・診療所が増えています。

①オンライン診療の本格導入
コロナ禍における時限的・特例的な措置として、再診だけでなく、初診も可能となったオンライン診療。長らく議論・準備されてきたオンライン診療ですが、コロナ禍での外出自粛によりオンラインでのサービス授受へのハードルが下がっていることから、利用したいと考える方は加速度的に増えていくことが予想されます。オンライン診療に取り組むことで、商圏を近隣エリアから大きく広げることができ、より安定した経営基盤を築くことができます。

②自費診療メニューの検討
他の選択肢としては、こちらに関してはハードルが少し高いかもしれませんが、自由診療の積極的な導入です。例えば「免疫療法」や「AGA」といった領域は近年盛んになってきています。また自費リハビリの必要性も一部からは聞こえています。このような注目されているものの未だにニッチな領域を探っていくことにより、もう一つ大きな経営基盤となっていくことでしょう。

コロナ禍の医療業界では、今までに例をみないレベルで社会的団結が求められています。しかしこのような状況下においても理事長、院長をはじめとする経営者は、クリニック・診療所を存続させることも考えていかなければなりません。このコロナを機に、一般中小企業と同様のリスク分散を検討してみてはいかがでしょうか。

重光洋亮
この記事を書いた人
コンサルタント
重光 洋亮

元看護師。新卒で日本赤十字社医療センターに就職。SCU(脳卒中ケアユニット)・脳神経外科・神経内科を経験したのち、2020年から株式会社グローカルに入社。広島県出身。第2の故郷は岩手県陸前高田市。