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経営戦略

【中小企業のアフターコロナ#4】製造業界におけるアフターコロナの見通し

中小企業はwithコロナ・アフターコロナの時代をどう乗り切るべきかー。

地方の中小企業の経営コンサルティングを行う株式会社グローカルが、業界ごとにアフターコロナの見通しをまとめました。このページでは、製造業中小企業におけるアフターコロナ対策をご紹介します。

他の業界に比べ、長く深刻な影響が続く製造業

新型コロナウイルス発生の初期から深刻な影響を受けている製造業。中国武漢で感染が拡大した2月初旬から、中国から国内への部品や原材料の供給遅延が顕在化し、その後日本国内での感染の拡がりに伴い大手の主力工場が停止するなど、他の業界に比べて長く深刻な状況が続いてます。

4月以降は中国国内での感染拡大が収束し、サプライチェーンの大部分、もしくは一部を中国に依存する企業にとって大きな正念場は越えたと言われていますが、日本国内で緊急事態宣言が続く地域において生産能力の回復が見通せない状況等を踏まえると、サプライチェーンに絡む連鎖倒産のリスクに対しては予断を許さない状況です。こうした厳しい状況を乗り切るため、政府による支援策を活用することはもちろんのこと、迫り来る多くの変化に対し、中小企業が今取り組むべきことは何なのでしょうか。

コロナ禍でも積極的に設備投資を行う事業者への手厚い支援

他の業界と同様、従業員の休業手当を保証する「雇用調整助成金」をはじめ、売上が減少している企業に支給される「持続化給付金」、実質的に無利子で融資が受けられる「新型コロナウイルス感染症特別貸付」など、様々な支援策が用意されています。

製造業を対象とした政府支援としては、中小企業・小規模事業者等の設備投資に対し1,000万円を上限に支援する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」において、通常枠とは別に補助率を1/2から2/3に引き上げ、営業経費を補助対象とした「特別枠」が新たに設けられています。また、国内サプライチェーンの脆弱化が顕在化したことを受け、国内へ生産拠点等を整備しようとする際の設備導入等を支援する、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助⾦」も整備されています。

多くの変化を乗り越えた先にあるアフターコロナの製造業

新型コロナウイルスの影響の長期化や終息後の再拡大を考慮すると、政府による支援を活用しつつ、いかに早く変化に対応するかが生き残りへの大きな分岐点になることが考えられます。感染拡大の長期化や経済活動の低迷といったリスクに対し、製造業においてはどのような変化が予測されるでしょうか。

①サプライチェーンの分散
特定国や特定企業に依存したサプライチェーン体制の見直しが進み、多少コストがかかったとしても取引先の分散によるリスク回避が優先されることが考えられます。生産面においては、サプライヤーの分散によりリスクを抑えることが重要になりますが、一方で販売面に関しては、多品種少量生産へと舵を切ることで、これまで取引が難しかった会社等への参入ハードルが下がることも予測されます。

②オンラインリード獲得の強化
他の業界に比べて製造業が大きな影響をうけているものとして、展示会等の中止による顧客接点の減少が挙げられます。今後も対面での顧客接点の確保が難しい現状が続くと予測されることから、ポータルサイトの活用や自社サイトでの販売チャネル整備、また自社サイトでの技術内容・活用方法の発信により積極的に新たな販路を開拓していくことが必須になるでしょう。(参考記事:「【売上UP】製造業中小企業のリード獲得#1」

③生産や開発現場へのIT導入
従来のように大人数が一か所に集まって作業をするというような業務形態は社内での感染拡大のリスクが高く、経営者がまず初めに着手すべき課題となっています。これまでも現場へのIT導入による生産性の向上が叫ばれてきましたが、今回のコロナショックを受けてその緊急性が高まったことに加え、感染リスクを考慮した仕組み設計が求められています。

サプライチェーンから業務形態まで、多岐にわたる変化が求められる製造業。中小企業がwithコロナやアフターコロナ時代に生き残っていくためには、リスクを排除した事業戦略、集客戦略、業務プロセスの再設計が求められています。

矢野口聡
この記事を書いた人
矢野口 聡

長野県出身。東京大学大学院にて工学修士取得後、国内大手メーカーに技術職として入社。 ディスプレイ材料の研究開発に従事し、新製品の立ち上げから製品化に至る一連の製品ライフサイクルに携わる。 地域のモノづくり企業における持続的な発展や、経営課題の解決に取り組みたいという思いから、グローカルへ参画。社内の新規事業立ち上げを中心に、事業戦略から人事組織事業、WEB集客・販促事業におけるコンサルタントを兼務。